日本語を話して自分の意思を伝える・日本語を聞いて相手の意思を理解する。これが国語の力の基本ですが、この基本の習得が簡単ではありません。会社が人を採るときも、まず、コミュニケーション能力の高い人を求めますが、ほかの能力との兼ね合いもあり、一流会社の社員といっても、意思疎通の満足にできる人ばかりではありません。なぜ、言葉による意思疎通は、これほど難しいのでしょう。
まず、ひとり一人の育った環境により、単語の意味が違います。例えば、「せつない」という言葉は、「体ではなく心がつらい」という意味で使う人、「現状が厳しくて体がつらい」という意味で使う人、どちらもいます。また、「悩ましい」なら、「女性がその魅力を発揮している」という意味で使う人、「正しい選択が難しい」という意味で使う人、どちらもいます。さらに、価値観そのものが多様性を持っています。例えば、「畑を耕して、自分が消費するために収穫するのが『とても恥ずかしい』と思う」文化もあるようですし、「上手に畑を耕して、自分が消費するために収穫するのが『とても誇らしい』と思う」文化もありますね。人がどういう時にうれしいか、また、どういう時に腹が立つかは、その人の育った文化が決めることです。様々な思い込みが人の言葉の理解を妨げます。現在の国語の教科書は、小・中学校を通じて、文化と価値観の多様性を伝えることに全力を挙げていますが、9冊の教科書でできることはわずかです。
基本となる国語力の養成には、やはり、読書が必要です。小・中・高でそれぞれ最低100冊、大学では少なくとも200冊。異文化理解を進め、必要な読解力と作文力を身につけましょう。映画・テレビドラマ・アニメを見て、知っている単語・語句・文章が増えれば、それが国語の力がついたということです。場面を覚えているのも国語の力です。