小学校を卒業し、中学生になって、突然伸びる子供がいます。現実にはいろいろなケースがありますが、典型的な例を挙げてみましょう。
早生まれで体も小さめ、運動会ではあまり活躍できなかった。ピアノもバイオリンも教室には通ったが、興味を持てず三ヶ月で辞めた。英会話もやったが、1年で辞めた。スイミング教室だけは、6年間通って、泳ぎ方はひと通り習得、フォームもきれいだ。中学受験は考えなかったので、塾には行かなかったが、学校の勉強で特に困ることもなかった。
誰にも注目されていなかったこんな子供が、中学に入学すると、学業の面で相当目立つ成果をあげることがあります。論理性を重視し、抽象能力の高いタイプなのです。論理の重視されない小学校の勉強では、彼(彼女)の力は発揮しにくかったのです。抽象能力も高く、平均、統計、確率の初歩事項については、一人で発見していたりします。
世のお母さんたちに対して、「あなたの子供は、ピアノの天才かもしれないし、バイオリンの天才かもしれない。その天才を押しつぶしたら、犯罪というものよ。」という脅し文句で、天才ピアニストとバイオリニストの発掘が広く行われています。ここで探されているのは、100万人に一人かそれ以上の人たちです。そんな天才はさまざまな方法でその天分を示します。心配はいらないのです。むしろ、20人中1番くらいのいわば、凡才のほうを心配してください。こちらは埋もれてしまうのです。
小学校4年生くらいからきちんとした先生について、適切な指導を受ければ、伸びていく子供たちは、確かにいるのです。最初に述べたような、中学に入って突然伸びたように見える子供は、その前から適切な指導が必要だったのです。どうか彼らに必要な機会を与えてください。