入学試験は過酷なものです。直前のにわか勉強で仕入れた知識などは不思議なほど役に立ちません。その人が、確かに身につけている知識・方法が試験結果に表れます。
入学試験だけはでなく、ピアノの発表会でも、芝居の公演でも、陸上競技の決勝でも、そこでなしえたことがその人の実力というものです。これに対して、普段の授業ではもっとできるとか、普段の練習のときはもっと上手だとか、もっと速く走れるといっても、あまり意味のないことです。
「本番で出した力」が実力です。つまり、いざという時に出せる力が実力ですね。だから、生まれてから死ぬまで、いざということなどなく過ごせるならば、実力などいらない。けれども、人生はいざという時だらけなのです。二十歳まで親の家にいて守られているとして、その間にも1回や2回いざというときはあるでしょう。その後親の家を出ればそれこそいざという時だらけになること請け合いです。就職、結婚は大物です。さらにあらゆるビジネスシーンで、年がら年中いざという時がやってきます。要するに、競争しているということです。
入学試験の受験とその準備は、「学力」という実力をつけることのほかに、「実力」のつけ方とその発揮の仕方を学ぶことなのです。